【連載/ウワサの映画 Vol.6】「スタンド・バイ・ミー」ファンも興奮。戦慄×感動のホラー体験! 



メイン州デリー(架空の町)に古代から生息する怪物・”IT=それ”。ビル・スカルスガルドの怪演に凍りつきます…
東京ウォーカー

ホラーを観た後とは思えない、胸がキュ~ンとなる淡いときめき…。

ピエロ野郎のエグすぎる蛮行シーンはもちろんなのですが、思春期の少年少女たちのキラキラとした輝きが脳裏に焼き付いて離れない「IT/イット ”それ”が見えたら、終わり。」。

上質なホラー映画と青春映画を一度に2本見たような、ミスマッチ感とお得感にハマっちゃいました!

ピエロ=笑顔の先入観のせいか、ペニーワイズがたまに見せる”真顔”の怖さに体が硬直…。かと言って、口を開けると無数の尖った歯が並んでるので、それも見たくないし…


スティーブン・キングが約30年前に発表した人気小説を映画化した本作。興行的にもホラー作品としては異例の大成功を収め、すでに続編の製作も決定。

アメリカでは不気味なピエロが街に相次いで出没するなど、社会現象になるほどの盛り上がりを見せました。

大物スターは不在ながら、ハイレベルな”子役たち”とトリッキーさが際立つ”怖さ”だけで勝負できている、作品力の高い1本なのです。

舞台は、子供の失踪が相次ぐ小さな町。不良少年たちのイジメの標的となっている内気な少年・ビル(ジェイデン・リーバハー)の弟が、大雨の日に外出し、おびただしい血痕を残して消息を絶ちます。

悲しみに暮れ弟を探し続けるビルでしたが、ある日突然、”IT=それ”が目の前に現れ、彼は恐怖に憑りつかれてしまいます。

同じ頃、ほかのいじめられっ子たちも、地下室やバスルーム、図書館などで”IT”に遭遇。彼らが恐怖を感じるたびに、殺人ピエロ・ペニーワイズ(ビル・スカルスガルド)などに姿を変えて現れる”IT”。その変幻自在の怪物に、ビルら総勢7人の"ルーザーズ・クラブ"が立ち向かうことに…!

”IT=それ”とは古代からこの町に棲みついている怪物で、自在に姿を変えるシェイプファクターです。27年周期で眠りから目覚めて、町の弱者である子供たちを襲い、むさぼり食うことを繰り返しています。

ペニーワイズというキャラは、少年を含む30人以上を殺害したという実在の殺人鬼がモデルなんですが…。このリアルな事件×怪物という設定が、現実と虚構の境目を曖昧にして、独特の恐怖感を発散してるんですよ…。

で、このペニーワイズがねぇ、夢に出そうなくらい嫌~な造形なんです。いくら顔の作りが派手だからって、ビル・スカルスガルドが演じてるとは信じたくない。上品なイケメン寄りの彼が、もう、この化け物にしか見えなくなってしまう(泣)。

”少年グループ”&”夏休み”で、のっけから「スタンド・バイ・ミー」臭がムンムンなのも、ファンにはたまりませんね。おまけに、”女子×鮮血”のビジュアルが「キャリー」を思起させたりと、キング・ワールドがパワーアップして凝縮されているかのよう。

繊細さと聡明さを持つ主人公のビル君は、「スタンド~」の主人公・ゴーディ君似で、兄弟が亡くなったことで両親と溝ができている点も重なります。”死体を探していたあの夏”が鮮明に蘇り、うれしいやら切ないやらで、感無量!マドンナ的な女子も加入した”ルーザーズ・クラブ”のチームとしての完成度も素晴らしく、一気に感情移入しちゃいます。

虐待を受けていたり、細菌恐怖症だったり、強迫神経症だったりと、それぞれに問題(=恐怖)を抱え、”IT”につけ込まれる子供たち。そんな子供時代の恐怖心や抑圧をテーマに、怪物の存在を信じている彼らにしか見えない惨劇が展開します(大人は”IT”が見えないばかりか、”IT”同様、子供たちの脅威でもある…)。彼らより幼いと戦う力がなく、彼らより歳を取るともう怪物は見えなくなる。短くて貴重な時期を、最高に残酷に、最高に美しく切り取っていきます。”IT”に勝つことは、自身の中の恐怖に勝つこと。友情と初恋と共に紡がれるひと夏の成長物語が、まぶしいっ!

”IT”は何に姿を変えて私を襲うのだろう?と、子供の頃に怖かったものの記憶を辿りましたが…。どうにも思い出せません。老化の気配が一番のホラーで、” あの頃”へのノスタルジアをいっそう誘うのでした。【東海ウォーカー】

【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします! 最近のお気に入りは11月25日公開「光」の井浦 新!



(出典 news.nicovideo.jp)